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「よい演劇をより多くの仲間と、京都で観よう」 KYOTO ROUEN

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2026年9月例会 東京芸術座公演『12人の怒れる男たち』          

緻密な構成と鋭い人間描写                                

「『12人の怒れる男たち』って、前に観たことあるよ」 そうなんです。京都労演では、俳優座劇場プロデュースで 1989年と98年の2回、例会になっています。今回、新たに東京芸術座による『12人の怒れる男たち』登場です! 驚きと感動のドラマ、楽しみましょう!

               

アメリカの陪審制度とは?                                

 アメリカの陪審を描くドラマなので、まずその制度をおさえておきましょう。
 合衆国憲法では、「すべての犯罪の審理は、弾劾の場合を除き、陪審により行わなければならない」と規定されています。陪審員は、18歳以上の市民から無作為に、通常は12名が選ばれて裁判に参加し、事実関係を審理して有罪か無罪か評決します。評決は、裁判官から独立して陪審員だけで議論して行い、全員一致が原則です。有罪となった場合、刑の重さは裁判官が決定します。

テレビドラマとして誕生                    
 このドラマは次々と姿を変えて舞台化に至りました。作者レジナルド・ローズの生涯に沿って、辿ってみましょう ローズは1920年、ニューヨークのマンハッタン生まれ。大学を中退後42年~46年、陸軍で服役。除隊後、広告代理店のコピーライターとして働きながら、50年に初めて30分のテレビドラマ「行先のないバス」を手がけます。  新進気鋭のテレビドラマ作家となっていた54年、ニューヨークの裁判所で殺人事件の陪審員に選出されます。その実体験をもとに、テレビドラマ脚本『12人の怒れる男たち』が誕生。同年、フランクリン・シャフナー演出により CBSの50分の生放送で発表されます。テレビ界で最も権威あるエミー賞を受賞。

ヘンリー・フォンダと共同で映画化                

 その放送を見てほれ込んだのが、なんと名優ヘンリー・フォンダ。映画化して自分も出演しようと考えますが、映画会社からはこんな地味なものはだめだと、相手にされません。仕方なく、映画でも脚本担当となったローズと共同でプロデュースすることに。できるだけ金はかけまいと、監督には映画は初めてのシドニー・ルメット、出演は自分とリー・J・コップの他は無名の舞台人を起用、セットは小さい部屋で、といった具合に制作。
 57年に公開されるや、「アメリカ民主主義の精神を体現する」と評価された陪審員八号(ヘンリー・フォンダ)を取り巻く激しいディスカッション・ドラマは、予想外の成功を収めたのです。ベルリン国際映画祭金熊賞等々を受賞。ローズの名も世界的に知られるようになります。
 その勢いで舞台化も実現。映画を観られた方は気づかれたかもしれませんが、上演台本も舞台化に合わせて視覚的な面やテンポが一層練り上げられています。成熟した「法廷劇の最高峰」は世界で称賛を浴びていくことになるのです。
 その後も、ローズはテレビドラマを書き続けます。「弁護士プレストン」(57年)は好評を得て61年から65年、連続テレビシリーズに発展し、日本でもNHK教育テレビで放送されます。「ある町のある出来事」(日本語タイトル)は59、日本でも放送され、芸術祭奨励賞受賞。
 50年から80年代にかけて、アメリカ3大ネットワーク(CBS、NBC、ABC)すべてで脚本を書き続け、人気を博しました。映画の脚本も手がけ、「ワイルド・ギース」など4本を書いています。2002年、死去。



現代も変わらぬテーマ                                   

 さて、『12人の怒れる男たち』に戻りましょう。舞台は、蒸し暑い陪審室。12人の男たちは、殺人の容疑者である1人の少年に、有罪=死の宣告を与えるか、無罪の評決を出すか、決定しなければなりません。間違えれば、容疑者を冤罪で死刑に追いやってしまうことになります。ローズも、「公判の最後に私と他の陪審員が下さなければならぬ決断が、いかに最終的決定的なものであるかについて、私は強烈な印象を受けた」と述懐しています。
 評決は有罪になるかに思えましたが、1人、無罪を主張する男がいました。「話し合いましょう、せめて1時間」。
 議論が始まり、白熱していきます。証拠や証言の矛盾が浮かび上がるにつれ、12人の間には亀裂が広がり、理性と感情、偏見と真実が激しくぶつかり合います。人間の尊厳、人権、そして民主主義とは?…シリアスな課題が、現代に生きる私たちにも突きつけられてきます。激論の果てに彼らが下した決断とは?
 ちなみに、冤罪を速やかに救済するため、日本でも袴田事件を契機に再審制度の見直しが進められ今年7月、改正刑事訴訟法が成立しました。しかし、証拠開示や検察官の抗告禁止をめぐって「改悪」の指摘があり、冤罪の問題の複雑さはここにもつながっています。

演劇でよりよい社会を ― 東京芸術座             

 東京芸術座の労演例会は、2015年の『蟹工船』以来で、11年ぶり。
 劇団東京芸術座は、戦前の築地小劇場の時代から日本の新劇運動の旗手として活躍してきた演出家・村山知義を代表とする新協劇団と、俳優・薄田研二を代表とする劇団中央芸術劇場(中芸)が合同して1959年、結成されました。村山の創作劇・演出を基調に、正統的なリアリズム演劇の創造と普及の運動を続けてきました。
 『国定忠治』『蟹工船』など村山が創作・脚色・翻訳・演出などで手がけた作品を受け継ぐ一方で、『12人の怒れる男たち』『橙色の嘘』など演目の輪も広げてきています。『橙色の嘘』も95年、劇団銅鑼との合同公演として京都労演例会になりました。
 『12人の怒れる男たち』は84年の初演以来、全国で再演を重ね、上演回数は2,000回以上に及び、劇団の財産演目となっています。
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 なお、この不朽の名作には、さまざまなオマージュが捧げられています。
★三谷幸喜『12人の優しい日本人』
 今の日本に陪審制度があり、議論下手な日本人が陪審員になってしまったら? という設定のコメディ。映画化もされて、どちらも大好評。
★筒井康隆『12人の浮かれる男』
  日本に陪審制度が復活し、おれたちゃ最初の陪審員。無罪の被告をそのまま無罪ではつまらない、なんとか殺人罪にできないものか?!というパロディ。
 他にも、ロシアの監督ニキータ・ミハルコフの映画「12」等々、インスパイアされた作品は数多くあります。それらからも、あらためて原作の持つ人間に対する視点の確かさと深さが浮き彫りになってきます。

あなたなら、この『12人の怒れる男たち』の評決、どう向き合われますか?(企画部 平岡)

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